幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「王妃様もタペストリーがよろしいですか?」


王妃様は少し考えてから、『身につける物を』と言った。


身につける物か……

何か華やかな物がいい。

王妃様の衣装は上質ではあるけれど、どれもこれも飾り気がない。


「飾り帯に刺繍をいたしましょうか? お好きな花とか、小鳥とか」


「文字も刺繍できますか?」

王妃様が言った。

「ほら、あのタペストリーにあるような古い文字も?」


「できますよ。刺繍する帯を下さいまし」


「もう? だって……」


「刺繍は話しながらでも出来ますから。あたしの故郷では、若い娘が手を動かさないでお喋りをしていたら、怠け者扱いされるんですよ」


鍛冶屋の店先でローズマリーとお喋りしたのが、もうずっと前の事のように思える。


母は元気だろうか。


それにホークも。

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