幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
宮廷付きの薬士でさえも、本物のユニコーンの角を見るのは初めてだった。


「大変貴重なお薬でございます。削らせていただくのは気が引けます」


「何を言うの? 削らなければ薬にならぬではありませんか!」

王妃様は強い口調で薬士を叱りつけた。

「皿を出しなさい。わたくしが削ります!」


すると、王様が見兼ねたように王妃様の手から短剣を取り上げた。


「王妃は角を持っておれ。余が削る。指でも落とされてはかなわぬ」


王様は薬士の差し出す天秤皿に、ユニコーンの角を短剣で削り落とした。

薬士は何度も王様の手を止めては、慎重に重さを計っていた。


「10グレーン……陛下、もうようございます」


「そんな少しでよいのか?」


「蜂蜜に混ぜ合わせて一口ずつ与えます。一晩様子を見て、回復の遅い者にはもう一口」


「――だ、そうだ。安堵したか、王妃?」

王様は皮肉っぽい口調で言った。

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