幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「許婚者だなんて言えるものか!」

ホークは笑いながら言った。

「ローズマリーと同じ所に通いたいとねだられて、村に手習いに出したらどうなったと思う? 帰った時には、ショーンに一目惚れだ。お前の熱の上げっぷりが可愛くてな。わたしの妻になる身だと言い出せなくなってしまった。母には、間抜けだと言われたよ」


あたしは吹き出した。


「なぁんだ。あたし、ずっとホークのお嫁さんにはなれないと思ってたんだ。身分も高くないし、財産もないから」


「身分も財産も、自分で持っているから十分だ。それに――」

ホークは、地面に置いてあるあたしの荷物を顎で示した。

「あそこに立派な持参金があるではないか」


ユニコーンの角

確かに誰もが手にできる物じゃない。


「そうだった。じゃあ、自信を持って伯爵夫人になる」


「アレクサンドラ」

ホークは苦笑した。

「伯爵夫人の前に、わたしの恋人になってくれ」


「"前"に?」

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