幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「奥様、お招きありがとうございます」


母がそう言うと、先代伯爵夫人はニッコリと笑った。


「来てくれてよかったわ、ブリギット。一人だったら退屈で死んでしまうところよ」


「そのまま死んだふりをしていればよろしかったのでは?」

ミリーが減らず口を叩く。

「さぞかし刺激的な晩餐になった事でしょう」


先代伯爵夫人は小さく『フンッ』と鼻を鳴らした。

「わたくしは娘の頃から、あの気取った『宮廷風』というものが肌に合わないの」


「奥様は田舎育ちでしたからね」

母はクスクスと笑った。

「わたしは宮廷が好きでしたよ」


「それはそうでしょう。あなたは王都でマスタフに見初められたのですもの」


先代伯爵夫人に冷やかされ、母の頬がポッと染まった。

マスタフとは、父の名だ。


「奥様だって、王都で先代伯爵様に会われたのではありませんか」

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