幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「他にも求婚者は山ほどいましたよ。持参金をたっぷりと持っていましたからね。あの方の求婚を受けたのは、領地がここだったからです」


先代伯爵夫人はいたずらっぽい口調でそう言いながら、あたしたちを屋敷の奥へと誘った。


通された部屋は、滅多に使われない来客用の晩餐室だった。


「イアン、ブリギットとサンディが来ましたよ」


部屋の中には、レディ·クリスタルと兄君のゲオルグ卿を筆頭に王都から来た人達がいた。

末席に厩で会ったパトリックの姿も見える。


立ち上がったレディ·クリスタルは美しかった。

黄金の髪を背に垂らし、宝石を嵌めた銀のサークレットを頭に載せている。

あたしは、急に自分の冴えない砂色のお下げ髪が恥ずかしくなった。

でも、それよりもあたしの心を捕らえたのは、レディ·クリスタルの衣装だった。


ああ、素敵!


あたしはため息が出そうになった。

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