モラトリアムを抱きしめて
仕方ない。

警察に連絡しよう。それしかない。

私が熱いココアを半分ほど飲んだ頃、少女は猫舌なのか少し口をつけ顔を歪め、じっとココアを見つめている。

静かな部屋はテーブルにマグカップを置いた、コトンという音がよく響いた。

「家がわかれば送っていけるんだけど……」

少女はまだココアを見つめたままだ。

私はわからない程度のため息を鼻から吐いて少女を見つめる。

「わからないか……遅くなるといけないし、お巡りさんに迎えにきてもらおっか?」

そう言って立ち上がり、電話に手をかける。

近くの駐在所まで送っていたほうがよかっただろうか?何て考えていると、いつの間にか少女が私の背後に立っていて驚いた。

「どうし―……」

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