モラトリアムを抱きしめて
この子に何があったのだろう。

夕飯の時も笑顔だったし、少しは心を開いてくれたように思うけれど、肝心な所をはぐらかされていた。

わかった事と言えば、名前と年齢くらい。来年、12歳になるんだと教えてくれた。

傷も心配だけれど、何か思いつめたような、遠くを見るように何かを考えているところが心配だった。

まだ12歳、小学生か。

私からしたら15年も昔の事。

小学生の時、何を考えていただろう。ふと、自分が12の時を思い浮かべてみる。


……。


あれ?

ぼんやりと浮かぶその頃の自分に全く実体がない。

はっきりと思い出せないのだ。


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