モラトリアムを抱きしめて
「はっちゃ……」

夕飯を軽く済ませると、はっちゃんは眉間に皺を寄せ、苦しそうな顔をしながらソファーで眠ってしまった。

どこか痛むのだろうか。

睫毛長いな……。

堂々と貼られた大きな絆創膏を撫でると、少しだけ顔の力が抜けたように見える。

小さな寝息をたてるはっちゃんを見ていると、明日の不安より、今の穏やかな時間を感じる事ができた。

変なの。明日はどうなるかわからないのに。

すぐに起こしてしまうのは可哀想な気がして、寝室から持ってきた毛布をかけてあげると、小さくなるように毛布に潜っていった。

ふふっ、可愛い。


こんな子が自分の子だったらなぁ――


そんな事を漠然と思う不思議な夜だった。



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