モラトリアムを抱きしめて
はっちゃんが私の手を握ってくれたように、私もはっちゃんの手を握る。

私の気持ちは伝わるのだろうか。

信頼はどうして出来るのかわからなかった。でもはっちゃんとは、そういう言葉で繋がりたかった。

もう、あの時のように表情を無くしたはっちゃんには会いたくないから。

少しの間見つめていると、はっちゃんはキュッと手を握り返し、頷くように瞳の中に私を映してくれていた。

けれど、乾いた瞳は変わらない。この子の闇の深さを知り、恐くなった。

私にこの子が救えるだろうか。

たった1日だけれど何かが通った気がしていた。

気のせい?

いや、勘違いだ。

『ごっこ』では、はっちゃんを救えない。


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