モラトリアムを抱きしめて
心の中で“ありがとう”と呟くと、太陽はさっきよりも高く、広く寒い空を暖めていた。

今日は暖かい。

静かな公園だけれど遠慮気味に伸びをして、驚いた。

何だろう?なんて考える間もなく、携帯と鞄をその場に放り、私はそれに駆け寄っていた。


――それは、何でもない冬の日。

それは、どうしたって不自然に、

そこにあった――


「ねぇ、ねぇ!大丈夫!」

少女は返事もなく、ザラザラの乾いた土の上に仰向けに倒れていた。

一瞬、触るのを躊躇してしまうほど少女は汚れ、鉄の臭いを放っていた。

それでも肩を強く揺する。

そうしなけばいけないかのように。

導かれるように、私は少女に何度も呼び掛けた。


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