モラトリアムを抱きしめて
「それだけじゃないよね……」

そんな事は節目や成長過程で頻繁に起きていた。

そのたび強い母への憎しみと恨みは増えていった。

そして、歪んだ憧れさえも……。


「……辛かったね」

私はあの時の自分に、あの時言われたかった言葉を言っていた。

「苦しかったね」

「悔しかったね」

「悲しかったね」



「……痛かったよね」

もう一度力強くはっちゃんを抱きしめて、泣いた。

あの日、涙が枯れてしまった自分へ、泣くことができなくなった自分へ。

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