サグラダ・ファミリア
「私は今まで、何も知らないで生きて来たから、
 この一団の真の目的とか、
 詳しいことはわからない、
 ただメシアを世に送り出すんだって、
 純粋に信じてここに居る。
 メシアって、救世主のことでしょ?
 救世主って、
 困ってたり、苦しんでたり、
 ・・・悲しんだりしてる人を、
 助ける人でしょ?
 そういう人を世に送り出す計画に、
 反対する人なんか居ない。
 私達、
 力を合わせなきゃならない時なんだよ、
 シンも、
 狐も、私も夕子も、ここに居る皆、
 全員、
 たった一つの目的、
 メシアを生むことに向けて、
 力を合わせて、頑張ればいい・・・」

「・・・」


「皆、目的は一緒。
 立場が違うだけ。
 誰の価値が高いとか、
 誰が一番大切かとか、じゃなくて、
 それぞれの役目を果たすために、
 協力し合うだけ」

自分自身に、言い聞かせるような思いだった。

「だから夕子を守る人、
 としての、私の立場に、
 私は不満なんかない、
 私は強い戦士になるよ、
 私は、
 私の役目を果たしたい、
 私にできるかもしれないことに、
 挑戦したい・・・」

私が言っているんじゃない、私の魂が、
私に言わせている。そんな感覚だった。

狐は眉根を寄せ、難しい顔をしたが、
夕子は唇をきゅっと結び、少し、涙ぐんだ。


「ありがとう、ゆうこさん」


シンは緊張の解けた顔で、お礼を言って来た。


組織分裂の危機に、
シンはシンで恐怖していたようだ。

何がそこまで、

シンを動かすのだろう。


目的を達成するためなら、
命を投げ出す、
というニュアンスの、発言さえしているシンの、
事情が知りたい。

「夕子の月経はあと5日で始まる、
 それまでに祝福を受けて、
 受胎しなきゃならない、
 一刻の猶予もないよ・・・!
 頑張ろう!」

シンが鼓舞するよう、声を張上げた。
聖職者と坊主が、一斉に拍手した。
黒人ガードマン達は、日本語がわからないようだった。


< 48 / 202 >

この作品をシェア

pagetop