サグラダ・ファミリア
狐は夕子をちらりと見てから、
私に視線を戻すと、片眉を上げた。

『仲良くできてんの?』

私は狐と夕子を、見比べた。
『うん』
『どっちが身体使うかとか、
 喧嘩しねぇの』
『夕子の身体は、夕子のものだよ』

「・・・」

『だから、この先、
 どうしようって、
 そればっか考えちゃう』

鼻の奥がツンとした。
残酷な現実・・・。

『出国とか、入国の手続き、
 やらないでここまでこれたのって、
 私が、
 人に見えないから・・・!でしょ?
 ってことは、帰っても、
 誰も、私のこと見えない・・・』

家に帰って、
おかえりって言われることも、

学校に行って、
おはようって声を、
掛けられることも、

進路に悩むことも、



もう、二度とない。



私にはもう、未来がない。





大学生をやりたかった。
社会人をやりたかった。
妻を、母親を、祖母を、やってみたかった。




気づいたら頬がスースーとしていた。
涙が溢れていた。

「泣くな」

「居場所が欲しいよ、
 私にはもう、
 帰れるところがないよ、
 家の近くとか、
 学校の近くとか、
 行ってもいいけど、
 絶対辛いだけ」

< 52 / 202 >

この作品をシェア

pagetop