海までの距離
海影さんがしていたピアスを思い出して、ヴィヴィアンにした。
未だに私の手首にはロイヤルオーダーのブレスレットが絡まっている。
朝起きてそれを手首に掛ける瞬間は、ひやりと冷たい。
それが、すぐに私の体温に馴染んで温まる。
雪が降るようになって、私は自転車での通学からバスでの通学に切り替えた。
しんしんと雪が降る日は、バスの運行が何時間も遅れて、よく遅刻した。
私は家に居ても仕方がないから、受験が終わった今でも学校に来ている。
咲も、私の家と同じくらい遠方に住んでいる。
だからだろう、咲はあまり学校に来なくなった。
通学に時間をかけるくらいなら、家で勉強していた方がマシ――そういうこと。
私が同じ立場だったら、私だってそうする。
咲と話す時間がどんどん減っていた。
話したいことは沢山ある。ただ、今はそれら全て咲にとっては“浮かれている”としか思わないだろう。
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