海までの距離
でも、海影さんは嘘やお世辞をさらっと言うような人ではないと思う。


「ううっ…」


私は窮し、


『それに、真耶はハーメルンのサポートしてくれるって言っただろ』


海影さん、そこに付け込んで更に一押し。
駄目だ、海影さんに勝てっこない。
それに、泣きながら海影さんにそんなことを言ったのは、確かに私だ。
忘れるもんか。
決意だって、変わっていない。
変わっていないどころか、その気持ちは日に日に強くなるばかり。


「分かりました!やってみます!」

『そうこなくちゃ!』


海影さんの喜ぶ声に、胸がきゅっと締め付けられる。
今の海影さんの顔、絶対可愛いはずだ。


『ディレイには、こっちで知人のライターを手配しますって言うから。あ、勿論僅かだろうけどギャラは出るよ』

「ギャラなんて、そんな滅相もない!」


だって、私が“書かせて頂く”ようなものだ。
大手雑誌の記事、大好きなハーメルンの記事を“書かせて頂く”。
こんなチャンス、滅多にない。
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