海までの距離
ずっと「有磨さん」「レナさん」と呼んできたから、海影が本名で有磨さんのことを呼んでいることが、なんだか違和感。


「で、女子高生のお名前は?」


カラーコンタクトを外してもその大きさは変わらないくりくりした目で、私をまじまじと見る。
化粧をしていなくても肌は綺麗だし、顔立ちだってその辺の女の子よりずっと可愛い。
優しい、甘い香水の香りがする。


「真耶、です…」


緊張のあまり渇いた喉で、名乗るのが精一杯。


「真耶ちゃんかあ。大人っぽいね」


雑誌で見た時、ステージで観た時とは全然違う表情のミチ。
なんか…口説き慣れてる…?


「真耶ちゃん、ミチさんに触っちゃ駄目だよー。妊娠しちゃうよー」


テーブルを挟んだ向こうで凪と談笑していたスタッフの女の子が、けたけた笑って私に向かってそんなことを言う。


「お前失礼だな!お前みたいな阿婆擦れと違うから、こんな純粋な子に手ぇ出さねえよ!」

「ひどーい!ミチさんの方が失礼だよ!ファンに手ぇ出しすぎてネットの掲示板じゃいつも誹謗中傷の嵐じゃん!」

「やかましいわ!余計なこと言って俺を陥れるな!」
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