海までの距離
ぎゃあぎゃあスタッフと騒ぐミチに、私は唖然。
素はこんな人だったのか…。
女の子顔負けのミチさんは、どうやら女遊びがお盛んなご様子で。


「でも、本当に今時の女子高生にしては落ち着いてるよな」


ミチとは反対方向、有磨さんの方から、低い声がした。
不意に有磨さんの方を向くと、その先で海影と目が合った。
初めて、まともに海影の素顔を見た。
細い手足や首筋が白くて、栗色の直線的な髪の毛は肩にさらさら流れ落ちるよう。
雑誌での初見とはまた少し印象は違えど、だけど、美人に間違いない。
ミチのお陰で少し解れた緊張が、またピンと固まる。


「この子は口が堅いし、ミーハーな子じゃないから。だから連れてきました」


私のその様子を悟ったかのように、有磨さんが私の頭にそっと優しく手を添えた。
いつもじゃれ合う私のよく知る手の感触に、僅かに安堵する。


「ま、玲奈や優香が連れて来る子なら信用できるからいいけど」


海影はライの前にあった灰皿を指先で引き寄せ、シャツのポケットから煙草の箱を取り出した。
その箱から1本抜き、口にくわえる。
オレンジジュースと煙草の、何たるミスマッチ。


「真耶ちゃん、趣味でライブレポート書いてるんですけどね、それがなかなか面白いんですよ。真耶ちゃんのファンも多いし」
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