海までの距離
私は仕方なく、集中力が欠如したまま数学の授業を受ける羽目になった。






放課後、教室の掃除が済むと、私はすぐさまトイレへ。
鏡と向き合って、じっくりと自分の顔を見つめる。
睫毛取れてない。ファンデーション崩れてない。髪はきちんとストレートをキープしている。アイシャドウも…うん、大丈夫そう。
ポーチからコーラル色のグロスだけを出し、塗り直す。
春にどう見られたいかも少なからずあるけれど、美人揃いの友人達の前では少しでも綺麗でいたいから。
元の顔立ちは決して美人でも可愛くもないけれど、私だってきちんと化粧していればそこそこのもんでしょ、なんて自意識過剰。
完璧に化粧直ししたところで………さて、行きますか!






学校からライヴハウスまでは自転車で行ける距離。
登校する時みたいにだらだら汗をかかないよう、ゆっくりゆっくりペダルを漕ぐ。
重たい教科書は全部、教室の机の中に置いてきた。
今夜は帰りが遅いだろうし、勉強する時間も無いと思うから。
受験生のくせに、この学習意欲の無さ。先生ごめんなさい。
森井、宿題は明後日には必ず出すから勘弁してね。
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