海までの距離
海影さんはさらっとそう言うけど、自己満足の文章とは訳が違う気がする。
推薦を貰えることに喜びは隠せない、だけど不安がないわけじゃない。


『ま、なんか行き詰まったらライに聞けばいいじゃん。そんなこんなで、まだまだ気ぃ抜かず勉強頑張れよー』

「はっ、はい!」

『じゃ、もうじき俺の番だから。お疲れ様!』


そう言って海影さんは電話を切った。
一方的な内容のメール以上に、一方的な電話。
私は呆然と携帯を見つめた。






その数時間後。
私が夕食を済ませてリビングでテレビを観ながら束の間の休息をとっていると、海影さんからメールが届いた。


件名「Re:」

本文「こんな感じ」


さっきの撮影の様子かな?
添付されている画像を開く。
その瞬間、私はお母さんと弟の裕(ゆう)が側にいるのも忘れて声を上げた。
そこには、藤色の女物の着物を遊女のように着崩した海影さんが、悩ましげにこちらを見ていた。
その絵に描いたような美しさに、私は携帯を手にしたままその場でフリーズ。


「どうしたの、大きな声出して」


お母さんが眉をひそめ、我に返る。
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