海までの距離
電話するのは、どうしても気後れする。
それでも、折角の好意。
意を決して、鞄から携帯を取り出した。
長引くコールが、私の緊張を更に駆り立てる。


『あ、真耶ちゃん?』

「ライさんですか?」


そこに電話すれば間違いなく互いに繋がることは分かっているくせに、何故か確認してしまう。


『もう着いたかな?』

「着きました!ええと、ちょうど校門の真ん前にいます」

『分かった。今向かうから、そこにいて』


ライさんの口調は優しい。
海影さんとは、また雰囲気が違う。
電話を切って私がその場で犬の如く“待て”をしていると、ライさんはすぐに真正面からやって来た。


「待たせてごめんね。俺、そこのコンビニで立ち読みしてて。無事に着けてよかった」


まともにライさんと会話をしたのはこれが初めてだけど、ライさんはにこにこ朗らかな雰囲気で私に接してくれる。
ライさんの格好はスキニーのデニムにブーツ、上はテーラードのジャケットという、おおよそビジュアル系バンドマンとは思えない出で立ち。
髪の毛だって、この前会った時はシルバーだったのに対し、赤みの強い茶色になっている。
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