海までの距離
「ミチ君が凪と俺をスカウトした時、俺らは断ったんだ。『勉強の邪魔しないでくれ』ってさ。そしたら海影君が…その時海影君はまだLOTUSにいて、俺らは殆ど面識なかったんだけど、『それなら受験が終わるまで待ってやる。受験が終わったら、改めて返事が欲しい』って言ってきたんだ」
「海影さんが?」
「LOTUSが解散することは、秋になる頃には決まっていた。ああ、ちょうど1年前か。海影君が俺らのところにそう言いに来たのは」
ライさんが視線を窓の外へ移した。
秋の木漏れ日が、ライさんの横顔に優しく降り注いでいる。
「それで、ライさんと凪さんは大学を受けたんですね」
「そう。無事に2人共、進学が決まった。1年間の付け焼き刃の勉強でも、案外なんとかなるもんだな。晴れて俺と凪は大学生。そして、すぐにミチ君と海影君のところに連絡した。やっぱり、バンドをやりたかった。もう一度、仲間を信じてみようって思えたんだ。だって本当に、海影君もミチ君も待っていてくれたからね」
一度は失った、人を信じるという心。
それを取り戻したのは、海影さんだった。