2番目の恋人
その指輪をつけた手で、触らないでほしい。
その指輪は彼女を思ってつけているのに、今その彼女を裏切ろうとしている目の前の男。
「彼女とは別れるからっ!」
……は?
裏切ろうとしているんじゃなくて、裏切った。
最低―……
「だから…「バカじゃない。」
「……え」
間髪入れないあたしの言葉に、南先輩の顔色が曇った。
「最初からあんたと付き合う気なんて、さらさら無かったから。」
「っ゙!!」
「じゃあさようなら。南先輩」
あぁ―あ。やっぱりこいつも他の男と一緒。
あの男と、変わらない……
「ただいま〜」
玄関のドアを開け、中に声をかける。
そんな声は、真っ暗の家の中に吸い込まれて消えていった。