飛べない黒猫
朝、蓮が居間に行くと、準備万端の真央が食卓テーブルでカフェオレを飲んでいた。


「悪いっ、寝過ごした！
今、顔洗ってくるから。
あ…俺も珈琲飲みたいな…」


蓮はバタバタとバスルームに駆け込む。

熱めのシャワーを頭からかぶり、全身泡立て髭を剃る。
歯をを磨きながら、また一気に全身洗い流した。

10分で終了。

タオルで髪を拭きながら居間に戻ると真央が目を丸くして言った。


「早っ…！」


慌ててキッチンから珈琲の入ったマグカップを運んできた。
カフェオレを作る時、蓮の分も用意してあったのだろう。

蓮は、濃いめの熱い珈琲を啜る。


「ん…旨い。
飲んだら、すぐ出よう。
車で行くよ。」


「うん。」


少し緊張ぎみなのか、どことなくソワソワしている。


「今日の服は、ギャルっぽいね。
まさかとは思うが…母さんのコーディネイト？」


「なによ！まさかって。
可愛いでしょ？
ちゃんと、プロのコーディネイターさんに選んでもらったんだから。
真央ちゃんの写真見せて…」


洋子がキッチンから顔を覗かせた。


「洋服と化粧は女の戦闘服よ。
気を抜いちゃ駄目。
特に今日みたいな勝負の日にはね。
ねっ、真央ちゃん！」


真央は恥ずかしそうに、バックの中からリップと小さなスティックを取り出した。
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