飛べない黒猫
カーテンをあけたまま、真央は満月の月を見上げる。

明かりを消して、窓からそそがれる月の光で部屋を満たすと、辺り一帯が静かに浄化されてゆくように思えた。



ペンダントを首から外して、出窓の中央に置いた。

ムーンストーンの事を調べた時に、月光浴という言葉を知った。

パワーストーンは様々な気をあびているので、定期的に月光浴で浄化して、石の波動をニュートラルに戻した方がいいと書かれてあった。

例えるなら、コンピュータを初期化するようなものらしい。


三日月よりも満月の方が、光にパワーがありそうで、真央は満月を選んで窓際に置くようにしていた。



真央は月を見上げる。
深夜1時を過ぎているのに、全然眠くない。

変な時間帯にあれだけぐっすり寝たのだから、当然だろう。
4時間も寝ていた。

御飯を食べてお風呂からあがったら、もうこんな時間。



蓮の部屋の前を通ると、まだ明かりが漏れていた。

確か昨日も朝方まで仕事していたと言っていた。
ドライブから戻った後も、打ち合わせだと言って出かけたし、いったい、いつ寝るんだろうと不思議に思う。



部屋に戻ってパソコンを確認してみたら、蓮から返信が届いていた。

聞かれた事には答えないと…。

そう思ってみたが、直ぐに送った方がいいものなのか、後にした方がいいものなのか悩んでしまう。


仕事で忙しいのに今、メールしたら迷惑かもしれない。
でも、質問しているのに返事しないなんて失礼だし…。

真央はパソコンの前で考え込む。


足元をウロついていたクロオが膝の上に飛び乗り、そのまま机に上がってきた。
キーボードにまたがりノビをする。

クロオを両手で抱えて顔を付き合わせる。
鼻と鼻とをくっつけると、ペロペロと舌を出す。

薄暗い部屋の中、クロオの目が月光を反射して緑色に光る。

硝子玉のような美しい目。
不思議な魔力で見守ってくれている目。

真央はクロオを膝に乗せて柔らかい毛を優しく撫でた。

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