Rose of blood *short story*
「もし…もしも、お日様が昇りきっても私が来なかったら……ここでの生活の事は全て忘れて、新しい人生を歩みなおしなさい」

『どういう…事……?』

「私のことを忘れて、アッシュという名前も捨てなさいということよ」



俺が首を振り嫌だと言うと、エリーは俺の頬を引っ叩いた。


驚き、エリーの顔を見ると涙を流していた。



「何を感じても、何が聞こえても、後ろを振り向かずに前だけを見て走り続けなさい。いいわね?」

『ッッ……分か…った………』

「いい子ね」



エリーは俺を抱きしめるとすぐに立ち上がった。


「お行きなさい」と言ったエリーの顔は、俺の大好きな笑顔だった。


俺はエリーに背を向け、言われた通り一度も振り返らなかった。






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