I LOVE YOUが聴きたくて
「わかってくれたんじゃなかったの?」

「……何を」

「お互いに夢があって、私達はパリで出会った。夢を語り合って、絶対に実現しようね、って約束した。毎日が夢への期待でいっぱいで、とても楽しかった。今でも忘れられない大切な思い出。怜は、夢を実現するために世界中を巡り、私は、夢を実現するために、日本に帰ってきた。そして、私は、ユウを授かったのを知った。私は、自分の好きなお店だけじゃなく、もうひとつ、宝物を与えて貰ったの。私達は結婚をしていなかった。でも、私は、産みたいって思ったから。だから、産んだの。伝えたはずなのに、どうして?」

怜樹は、黙ったままだった。

「まだ言ってるの?理由があって、こういう経緯になった。私は、言えなかったんじゃなくて、言わなかった。私が産みたかったから。育てたかったから。自分で決めたことだから。そのことで、貴方に結婚を迫ったりしないわ」

「俺の子だろ…」

「そうよ。でも、それを理由に、貴方に結婚を迫ったりしない。今までも、これからも。ただ、貴方に、この子の可愛いさを、味わせてなかったんだ。傷つけたと思ったから、謝ったの。勘違いしないでね。自分の決断したことに、悪かったと思って謝ったんじゃないわ。貴方の気持ちもあるから、それに対して、謝ったの」

そう言って、魅麗は、怜樹に背を向けた。
そして、歩きだした。
「俺は、そんなに頼りないのか?」

怜樹は、もう一度、魅麗に尋ねる。
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