I LOVE YOUが聴きたくて
綾は、理解できずにいた。

そんな綾の様子を察したのか、修は、遠慮気味に口を開いた。

「あ、…いや。ちょっとね、気になってさ。ごめん悪りぃ」

修は、片手を顔の前で「ごめんね」の仕草をし、別に答えなくても良いよとでもいう様な雰囲気をした。
「あ、…ううん…。知り合いのお姉さんが、新しくお店を出したの。そのお店がとっても可愛くて、お姉さんもいい人で、だから、すぐに行きたくて、急いで行ってるの」

「へぇー。何の店?」

「雑貨屋さん」

「新しくできたんだぁ。知らなかった」

「近くだよ。あ、男子は興味ないかもね。マッシュルームっていう名前のお店なの。きのこの形のきのこの模様をした、可愛いお店だよ。まるで、絵本から飛び出してきたみたいなの」

「そうなんだ」

「うん」

「今日も行くの?」

「うん。今日は、家庭教師の日だからあまり時間がないんだけど、いつも寄ってるから、ちょっとだけね」

「そっか。………俺も一緒に行ってもいいかな」

「へ?」

綾は、目を丸くした。

【何かの冗談?】

綾は、心の中で呟く。

修は、いつものクールな表情をしている。

綾は、尋ねてみた。

「冗談?」

そして、修を伺う。

「ううん。冗談なんか言ってないんだけど」

修は、真面目な顔をしている。

綾は、返答に困っていた。

【別に、一緒に行ってもいいけど、笠原くん、女子にモテるのよ。一緒に歩いたりしたら、すぐに噂になるし、何で?って聞かれるだろうし……めんどうだなぁ】

「なんか、迷惑そうだね」

修が、苦笑いをする。
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