I LOVE YOUが聴きたくて
「ううん!迷惑なんか…」
綾は、焦って言ったが、言葉が続かない。

「いいんだ」

「あの、ホントに、迷惑とか思ってないの」

「ホントに?」

「ホント」

「良かった」

修は、爽やかな笑顔をした。

「あ、そうだ。何で、冗談って思ったの?」

「え?…あぁ。だって、笠原くんが、女子にあんなことを言いそうになかったから」

「あぁ。そっか」

「うん」


少し、沈黙の間が流れた。

綾は、この間に違和感を感じていた。
そして、だいたい、どうして、こうやって話をしているのだろう、と、不思議に思う。


「ねぇ早乙女さん」

修が、改まって呼ぶので、綾は、何故か、かしこまった。

「はい」

「何でだと思う?」

「え?」

「何故、僕は、早乙女さんに言ったと思う?」

「さぁ…」

綾は、首を傾げた。

「わからないの?」

修は、何でという表情をあからさまにした。
「はい」

綾は、真面目に答える。
「そっか…」

修は、遠い目をした。
そして、髪をかきあげる。

修は、少し黙っていたが、何かを思いついたように微笑んだ。

「じゃあ、考えてみて」

「…?」

「わかったら教えて」

綾は、意味がわからないので、何て言ったらいいのかわからず黙ったままでいた。

「ね」

修が、あまりにも爽やかに促すので、綾は、思わず返事をした。

「はい…」

「よし!じゃあ、俺、今から部活だから。早乙女さん、気を付けてね。またね」

そう言って、修は、爽やか笑顔で立ち去った。

綾は、ひとり、ふと思う。

【なぁんだ。やっぱり部活あるんじゃない。だったら一緒に行けないじゃん。冗談言って】

綾は、呆れて笑った。
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