I LOVE YOUが聴きたくて
暫く続いていた淀んだ天気が、今日は、珍しく晴れ間が見え。

雲の間から、太陽が時々顔を出す。


「雪が降るぞ」

老人は、目を細めて、怜樹に言った。

「もう?」

季節は冬とはいえ、十一月になったばかり。

今日は、珍しく、鉛筆で筆画をしていた怜樹が、空を見ながら尋ねる。

「おう。そうじゃよ」
老人は、優しい目をして微笑んだ。

「そうなんだぁ」

怜樹は、筆を止めて、ゆっくりと、空と海を眺めた。

【魅麗は、寒くはしてないだろうか。あの子は、元気かな】

怜樹は、考えていた。

「会えたかの?」

老人は、自分の腰をかばいながら腰をおろした。

怜樹は、すぐに質問の意味がわかり、首を振った。

老人は、それ以上は尋ねずに、黙っていた。

「会わなかった。…いや…、会えなかった…」

「まぁ、そんな日もあるじゃろう」

老人は、怜樹を優しく微笑んで、頷いた。


怜樹は、老人といると、とても清んだ素直な気持ちになり、何でも素直にはきだしたい気持ちになる。

怜樹は、今、思っていることを口に出してみた。


「わからないんだ。頭ではわかっていても、行動ができない。こんなはずじゃないのに、僕は変わっちゃったのかと思うくらい、前に進めない。明るく前向きにできなくて、自分らしくない」
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