I LOVE YOUが聴きたくて
魅麗は、怜樹に抱きしめられたまま、硬直した。

覚悟をしていたはずだったが、実際に、その時が訪れたときの感情は、言葉にならないほどに、魅麗の心をつき抜けた。
声が出ないほどに、きつく鋭いものだった。

現実は、想像以上のものであった。


立ちはだかっていた大きな壁が、一気に崩れ落ちる。

壁を越えたというよりも、もの凄い音をたてて崩れたので、魅麗も、張りつめていたものから、心身ともに、崩れそうだった。

いや、崩れてしまったのかもしれない。


魅麗は、何も言えなかった。


怜樹からも、その後の言葉はなかった。


【どうなるのだろう。どういう展開になるのだろう。怜樹は、何て言うのだろう。どういう態度になるのだろう…】


魅麗は、思わずにはいられないながらも、考えたくはなかった。

考えがまとまらなくなっていた。

【怜樹は、私を、私のとった行動を、どう思っただろう。怜樹が冷たくなったらどうしよう】

魅麗は、自分の決断に自信があったはずなのに、何の迷いもなかったはずなのに、今は、不安で不安でいっぱいだった。

一刻も早く、ひとりになりたい気持ちにさえもなってしまいそうだった。
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