頭痛
「私が、秋史ですが」
相手から名前を確認されたので、秋史はやむなく答えた。
「やっぱり秋(アキ)やったか。声でそうやないかと思ったんやけど」
「どちら様で?」
「信一郎。相馬信一郎」
どこかで聞いた名前である。
「えーと、相馬さん」
「信ちゃん言うてくれとった、あの信一郎やで」
「しっ、信ちゃんかいな」
秋史は思い出した。仲の良い幼馴染みの名前ではないか。そんなことまで忘れてしまうようになったのかと、秋史は溜め息を着いた。
「アキ、元気しとったかいな」
「ああ、元気でやってるよ」
「あの事故からもう十年になるが、実家へは帰って来んのか」
「帰らないよ。全部吹っ飛んだんやから、こっちでやっていくよ」
「あんな事があったんやから、その方がいいかもな」
「信ちゃんはどうしてた。よくこの電話番号が分かったね」
「こっちは、家業の酒屋を継いで、普通に暮らしとるよ。番号の方は登記簿に載っとったよ」
「登記簿? 何でそんなもん見たんだ」
「地元の不動産屋が調べたんだよ。俺が土地を探してたから。それでアキの名前が出て来たもんだから、不動産屋に任せずに、俺から連絡してみることにした」
「そうか、それで?」
「家業の酒屋だけじゃ、この先、食っていけないと思ってな、スーパーをやりたいんだ」
「スーパーか」
株の運用を始めてからというもの、秋史には物の大体の価値が即座に見えるようになっていた。信一郎は言わないが、もくろみ通り、田舎でも、地域一帯に店の少ない自分の故郷なら、スーパーに需要が集まるだろうという事ぐらい、手に取るように解った。
「よく考えたのか」
「ああ、父親の代から、俺は言ってたんや」
「要するに、実家の土地が欲しいんだな」
「そうなんだ。売ってくれないか」
相手から名前を確認されたので、秋史はやむなく答えた。
「やっぱり秋(アキ)やったか。声でそうやないかと思ったんやけど」
「どちら様で?」
「信一郎。相馬信一郎」
どこかで聞いた名前である。
「えーと、相馬さん」
「信ちゃん言うてくれとった、あの信一郎やで」
「しっ、信ちゃんかいな」
秋史は思い出した。仲の良い幼馴染みの名前ではないか。そんなことまで忘れてしまうようになったのかと、秋史は溜め息を着いた。
「アキ、元気しとったかいな」
「ああ、元気でやってるよ」
「あの事故からもう十年になるが、実家へは帰って来んのか」
「帰らないよ。全部吹っ飛んだんやから、こっちでやっていくよ」
「あんな事があったんやから、その方がいいかもな」
「信ちゃんはどうしてた。よくこの電話番号が分かったね」
「こっちは、家業の酒屋を継いで、普通に暮らしとるよ。番号の方は登記簿に載っとったよ」
「登記簿? 何でそんなもん見たんだ」
「地元の不動産屋が調べたんだよ。俺が土地を探してたから。それでアキの名前が出て来たもんだから、不動産屋に任せずに、俺から連絡してみることにした」
「そうか、それで?」
「家業の酒屋だけじゃ、この先、食っていけないと思ってな、スーパーをやりたいんだ」
「スーパーか」
株の運用を始めてからというもの、秋史には物の大体の価値が即座に見えるようになっていた。信一郎は言わないが、もくろみ通り、田舎でも、地域一帯に店の少ない自分の故郷なら、スーパーに需要が集まるだろうという事ぐらい、手に取るように解った。
「よく考えたのか」
「ああ、父親の代から、俺は言ってたんや」
「要するに、実家の土地が欲しいんだな」
「そうなんだ。売ってくれないか」