薄桃の景色に、シルエット。
『さぁ……』


 届くわけがない―――のに。

 彼は、ゆっくりと顔を上げた。最後に見せた顔より虚ろだが、瞳の奥には小さな灯りが視える。


『顔を上げたら出発だ。私とともに、行こう』


 そうしたらそこが、彼の新たなスタートライン。

 部屋の片隅には残響を置き去りにして。

 さようならを言うには……まだ早かったかな。そう、私は思ったのだった。


* * E n d * * *


 いろんな謎を残したままの物語。

 こんなお話もたまには良いでしょう?

 彼はどうして部屋の片隅にいるんだろう。

 彼にとってヘッドホンから流れる音楽にどんな意味があったんだろう。

 そして、「私」は誰だったんだろう。

 彼は部屋を出れたのだろうか。

 部屋を出れたきっかけは何だったんだろうか。

 全ての答えは私の胸の中だけに。

 自由な解釈を、あなたに。

writing by 09/11/29
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