【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
課題を手伝わされている頃に
男4人缶詰め状態で閉じこもっているこの状態。

"夏休み"

と言うのには、少々重たく、あまりにも華がない。

目の前に乱雑に広がるテキスト。机の上で突っ伏している友達は……大丈夫、息はしている。

それらが全てを物語っていた。


***



「マジでごめんっ、本当ごめんって。
でも依乎(イオ)いないと俺、この夏宿題だけで終わるから。本当今だけ助けて下さい!!後でアイス奢るからアっ!!」

「はいはい。……あ゛ーもー分かった。分かったから腕にしがみつくな暑苦しい。俺もダチにこんなに頼られてると思うと……なんか嬉しいよ」



「目が、笑ってない……」



あれ、笑ってなかった?


俺は今、ダチの宿題……というか課題を半ば強引に手伝わされている。

んで、コイツの名前が岸本 律(キシモト リツ)
コイツは俺と同じの高2な訳で。サッカー部に所属している言わばスポーツ馬鹿。
サッカーボールとは仲良く出来ても、勉強はどうも上手くいかないらしい。


理数系が破滅的なコイツに、俺は勉強を優しく教えてあげているという流れである。


「律、お前解の公式言ってみろ」

「解の公式って……ちょっ待って。2a分のbの2乗−4acだっけ?あっ、ルートなんちゃらが抜けた。や、ややこしいんだよな!!あははっ……あはっ」

「公式も言えない訳ね……。そうかそうか。……もう次に言うこと、わかってるよね?」

「依乎ごめん、本当許して……」

「ここにある計算30題。間違えた数だけデコピンだからな」


デコピンをする振りをして見せる。


「……お前らも解の公式が言えないとか言うなよな?」


ーーそうだ。俺は律以外に後二人、ご丁寧に勉強を教えてあげていた。両方とも律の中学の時からの友達らしい。


"らしい"って?
だって初対面だから。そいつらにまで勉強教えてる俺って、流石に面倒見良すぎて泣けてくる。




「依乎にだったらデコピンされてもいいかもなァ?」


一人がそんな事を言って笑う。にやりと効果音がつきそうな笑い方だった。確か津田 諒(ツダ リョウ)だったっけ?


「女王様からお仕置き受けてみた〜い」


…………こんなに分かりやすい挑発は久々だ。頭にカッと、血が上るのが分かる。拳をとっさに握り締めたせいか、白みを帯びてきたソレをこのままコイツにぶつけてやろうか……。


黙り込む俺を見て、律が慌てて間に入る
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