【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
「何言ってんだ馬鹿りょー!!お前、それが先生に対する態度かっ。お前が依乎に会いたいってうっさいから、今日ここに呼んでやったんだぞ!!

それにコイツのデコピンは相当痛いからなァ!!あの指見てみろ、すんげェー長くて……」


律が必死に、多分……あれは、俺をなだめようとしてくれてる。


(必死すぎてバタバタしてるようにしか見えねぇ……)


俺はそれが段々可笑しく見えてきて、いつの間にか声を出して笑っていた。


「律、慌てすぎだっ。
てかお前がバタバタしたってツツ……ははっ、本当、律って見てて飽きないなっ」


可笑しかったから笑ってた。
ただそれだけ。本当それだけなのに、律の顔と言ったら本当見事なアホ面で硬直。はっと意識が戻ったと思うとさっと顔を横に反された。


耳が赤い。コイツ今更照れてやんの。俺はわざと、「耳まで真っ赤だ」って教えてやると、うるせェと一言返ってきた。


律は優しい。今みたいに俺を庇い助けてくれる。まぁ、今のは助けると言うより笑いを誘ってくれた。全くありがたい奴だ。


俺は生まれた時からよく女扱いされからかわれた。原因はこの顔、体型にあるらしい。


律とダチになった時。
アイツが悪気もなくこう言ったのだ。


「すっげェー綺麗だな……お前。男に美人ってねェわって思ってたけど、お前は本当美人だなっ」

正直びっくりした。
ナニコレ告られてる……?

でもアイツはふざけてなんて少しも感じさせない曇りない笑顔で笑ったのだ。


…………嬉しかった。


美人だって褒められたからとかじゃなくて。コイツは俺を馬鹿にしないで見てくれる、そんな気がした。


それは今も変わらない。

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