【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
アイツのキスは凄く上手かった。
息ができないくらいの巧みなキス。こんなに深いの、女じゃまず出来ない。やはり相手は男なんだと……、再認識させられているようで。


ドン、と花火の打ち上がる音がはっきりと聞こえた。本当なら、色とりどりの花火を見上げながら、この心臓に響く花火の音を楽しむつもりだったのに。


花火の音に気をとられていると、まるで「余計なことは考えるな、集中しろ」と
でも言うように舌を吸われる。


こんな男同士でキスしてるのに、周りが全く気付く気配がないのは、やはり花火に目を奪われているからか。……辺りが暗くて、本当に良かった。



ーーどれくらいそうして居ただろうか。
俺の頭は麻痺してきて、考えることを放棄し始めている。



(あ、やばっ……本当気持ちいい)



気持ちいいと感じた俺の身体は、より深くその先を求めそうになる。熱い吐息を吐き出して。

……ほら、理性が崩れていく。



(もう、どうにでもなれ……)



握り締めていた掌を離し、お前の首の後ろに腕を回す。ついでに挑発するように唇を甘みしてやった。すると君の腕が、今度は腰ごと引き寄せてきた。


貪るような、快感だけを求める行為に背筋がゾクゾクする。




今日一番の流されっぷり。
君のペースにどっぷりハマって。




次々と打ち上げられる花火の下。俺の思考はお前のくれる濃厚なキスに、すっかり甘く溶かされていた。


***


突然君は俺から離れた。真っ直ぐ見つめられたその瞳は、さっきよりも濃く見えて。


花火の光に照らされた君の唇は、俺達の行為を決定付けるように艶っぽく光っていて、妙に色っぽかった。


まだ思考がぼんやりしている。
俺は今、どんな間抜け面を披露しているのだろうか。君の掌が俺の髪の毛をグシャリと混ぜる。




ーーあぁ、君が離れていく。


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