【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
熱くて柔らかい感触。
捕食されいてるような生々しい、これは……


(あぁ、なんで……)


夢であって欲しいと、この時はただ願った。やけに時間の流れがゆっくりに感じて、手汗が滲む掌を君の服越しにギュッと握りしめる。




ーー酸素が足りない。
ーー息を吸わせてくれ。




息苦しい理由はもちろん君で。
俺の頭の後ろを支えるように、添えてあっただけの君の手が、次第に扇情的な動きで押さえつけてくるもんだから。


(なんでこんなことっ……)


普通だったら男同士でこんなこと絶対にしない。これをただの遊びだって言うのなら、尚更たちが悪い。



(……お前がしてるキスは、冗談で通じないソレなんだよ)



唇を噛まれ、驚いた俺は身体を引こうとした。
が、再び引き戻される。


「……っは、んッッ?!」


内側に侵入してきたアイツの舌を押し返そうとしていたら、逆に深く絡めとられてしまった。現実逃避も出来ないくらいに、深く深く絡みだしたソレに体が震える。


……体が熱い、たまらなく。
ぬるい汗が背中を伝う感覚が、リアルで気持ち悪い。


君に抵抗の声は届かない。
完全無視かよッッ。




……花火どころじゃねぇ。

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