【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
あの日も確かこうやって風鈴が鳴っていて。何か無性に心がざわざわしたんだっけ。


あの日を境に、俺は平凡な毎日に少し退屈していたことに気付いた。


ーー何か起こればいい。


あの日思ったように。普通を変えてくれるような、そんな出来事が起こればいいって。





[ チリーン チリーン…… ]


ーーあぁ、そうか。
風鈴って何かを予感させる音なんだ、なんて。我ながら少し上手いことを言ったと思った。


「……から、掃除当番は……で行います。担当の……」


先生の話がぼんやりと聞こえる。


俺はだらりと机に任せるように頭を預ける。やっぱ夏休み明けの一日目ってすっごい体がダルい。
退屈な話にくぁーと欠伸が出た。


「……なので……して下さい。では、入ってきて下さい」



ガラガラっとドアを引く音がした。クラス中がざわざわしてるのが空気で伝わる。


「……この時期に珍しいね」

「うわっ、…………じゃない?」


女子の少し高めの声が耳につく。しばらくしても落ち着かない生徒に、先生が「静かにっ」と声をかけた。俺も何となく空気を読んで一度顔を上げる。

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