【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
***


「やっぱ学校はあっぢーなぁっ……」

「だよな、暑すぎる……。律、なんか涼しくなる話でもしろよ」

「えぇっ?!依乎さんそれって無茶振りっスか」


廊下を歩く、俺と律の会話。


「涼しくなる、あっそう言えば俺の金魚の名前……」

律が最後まで言い終わる前に、前から歩いてきた友達を捕まえ声をかける。


「おー和樹おはよー。てかお前だいぶ焼けたなぁ。焦げすぎて真っ黒ww」


「ちょ、依乎……??酷くない??」


相変わらず律いじりは楽しい(笑)




いつも通り、途中で会った律と学校に登校して。始業式の校長の話が長すぎると悪態をついて。


ーー今、教室に戻ってきた訳で。


いつも通りが始まった。それなりに充実していて楽しい毎日。


窓際の一番後ろ。そこが俺の特等席だ。
ぼーとしててもバレないし。言っちゃえば、ケータイ弄り放題って訳だ。


「滝沢、一つ前に詰めてもらえるかー」


担任に突然そんなことを言われて、思わず「えっ」と聞き返す。確かに一つ席の数多いなと思ってたけど。お気に入りの特等席は離れ難い。


「ほらみんな席着けー。HR始めんぞー」


黒板の前に立って指示する先生に、聞くタイミングを失った。俺は言われた通り大人しく、一つ前の席に腰を下ろしため息をつく。


明日の予定を話す先生の話をぼんやり聞きながら、窓の外に目をやる。例年より涼しいと言ってもまだ暑い訳で。


[ チリーン、チリーン…… ]



この音は、風鈴か。


音の方向を見ると、金魚の柄の風鈴が窓の所にぶら下がっていた。クラスの女子が、夏休みにでもつけたんだろう。


季節外れ、ではないか。夏休みは終わったけどまだ普通に暑いし。


ーー風鈴の音色を聞いて思い出すのは、やっぱりあの夜のこと。

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