【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
ーー嘘だ嘘だ嘘だ。


教卓前にいる男は、見れば見るほどアイツにしか見えなくて。


「滝沢どうしたー、座りなさい」


先生の言葉にイスを起こして、よろよろとした足取りで席に着く。俺の心臓だけが、誰にもバレずに早鐘を打っていた。



耳が見えるぐらいの長さに切られた藍色の髪。無造作にワックスか何かで整えられているようで。耳から覗く、シルバーのピアスは藍色の髪を際立たせるように、キラッと光っていた。


君はもう俺の方を見ていなかった。
先生に席を案内される。



「えーと、窓際の一番後ろね。あの一個空いてる席。滝沢、仲良くしてやれよー」


イスを倒して注目を浴びた俺を先生がからかう。クラスがまたザワザワと煩くなった。


(こんなことあんのかよ……)


ゆっくり歩いてくる"神谷"は近づけば近づくほど、あの時の……


何で名前、違うんだよ。




……胸が苦しくて。上手に息が出来なくて。


「では…最後に…で、…下さい」


先生の話が頭に入ってこない。周りの音全てが、耳を塞ぎたくなるような不快な音に聞こえる。

落ちつけ、落ちつけ。言い聞かせるよう胸を押さえる。
その時、後ろの方から声が聞こえた。


「……よろしくな、滝沢君」


爽やかな好青年と感じとれる声。
俺はこの声を知らない。



ーー誰だよお前。



背筋がゾクリとした。

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