【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
さっきまで気が付かなかった。
涼しげな風鈴の音色。夏らしくてなんかいい。


「ちょっと休憩なっ」
律が声をそう言って立ち上がる。さっき俺が言った計算問題を全部やり終えたらしい。


「飲み物麦茶でいい?てか、他にないけど」


俺達が頷くのを確認すると、律は部屋を出て行った。
ガチャン、と言うドアの音。間も無く風鈴の音色がその後ろ姿を追うようにチリン、と心地よく響いた。

俺はまだ、なんとなくその風鈴から目を離すことが出来なくって。ぼーっとしてると俺の肩に重、み……??


「ねぇー、どこ見てんのー。俺つまんないんだけど」


肩に乗った頭。すっかり調子に乗った諒が、猫なで声で聞いてくる。


俺は体をよじって避けると、「あれ」と風鈴を指差す。


「なんか夏らしくていいなって思って。やっぱ風鈴あると夏だなっとか思わねェ?音色聞いてるだけで涼しくなるつーか」


「お前、たまにそうゆーモードにも入っちゃう訳。てか天然?」

「そうゆーって、後、天然とか初めて言われたんだけど。

……てか、お前髪綺麗だなっ。触っていい?」


諒の髪に触れる。染めてるであろう髪にしては、サラサラと音がしそうなくらい艶やかな髪だ。


今思ったけど、諒ってなんか女が好みそうな顔してんじゃん。バンドをやってるとかで服とかもなんかシャレてるし。大きな切れ長の目が少し戸惑ったように横に反れる。


あっ……、俺はずっと諒を見つめていたらしい。


「マジで無意識とか……タチわりイつーの!!……ムラムラするわーお前」


ワリぃ……無意識でなんちゃらの後、声小さくて聞こえなかった。





「……ん、あ、そうか。何、お前具合でもわりぃーの?吐き気?そう言われてみれば顔少し赤いぞ」


俺は心配になり諒の顔を覗きこんだ。熱でもあんのかな、コイツ。
律がお盆にお茶やらをのせて帰ってきた。


「はい、麦茶。依乎、どした?」

「なんか諒が、ムカムカす」

「なんでもないからきーすんな。律、俺にもお茶プリーズ!!!」


慌てたようにお茶を飲みむせている諒。マジで大丈夫かよ……。
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