【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
諒が大丈夫と言うからまっいっか。
俺はさっきの風鈴を思い出して指差す。


「なぁ律、お前にしてはなかなかいい趣味してんじゃん!!風鈴なんか部屋に飾っちゃってっ」

「んぁ……あぁ、あれ。母さんがなんか夏なんだからとかで部屋に持ってきたんだよ。まぁー確かに夏らしくて涼し……あっ!!」


律がなにか思い出したかのように固まった。「ん、どした?」と相づちを打つ俺。


「今日、そこの神社の祭りじゃんっ。依乎、この後暇だったら一緒に祭りいかねェ?祭りでなんか奢ってやるよっ」


にこっと笑った律を見て不覚にも、可愛いと思ってしまった。でも律はたまに俺を……んーと、こう言うのなんつーだっけ。


(あっ、キュンとさせる、とか……?)


……な、何考えてる俺。


「行く行くっ。祭り好きだし。あっ、花火とかも見れんじゃね?」

「……律。なんで依乎は祭りに誘うのに俺は誘ってくれない訳」

「あっ、忘れてたっww」

「こんにゃろっ」


諒が律に掴みかかった。ケンカじゃないのは見て直ぐ分かる。2人を眺めているとなんか本当の兄弟に見えてくる。

騒がしい周りのせいか、眠りから覚めたらしい田中が大きく伸びをして立ち上がった。


「おはよー、田中。いい夢見れたか?」


「……爆睡だったからなにも」

「……(笑)」





こんな感じで話したり、ゲームしてたりしてたら、あっと言う間に時間は過ぎていて。西の空に夕日が隠れようとしている。


今日の夜は涼しい。
窓を見やると風鈴が揺れる。


何だか自然と高まる気持ちは何なのだろう……。
例えるなら…リレーの順番が回ってきた時の、体を走るような緊張感と、早く早くと急かす心臓の音。

そしてそれは、同時に何か凄い事が起こることを期待してる。




期待って……、俺は何に期待してんだろ。



何か起こる、起こればいい。



今思うと、そんな期待がずっと胸を締め付けていたのかもしれない。
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