【BL】風鈴が鳴る頃に[短編]
「もうそろそろ花火大会始まんじゃね?」


諒の一言により、俺たちは花火がよく見える場所に移動することにした。
その前に、みんなの飲み物を賭けて急遽ジャンケン大会が開催された訳だが……




「うわっ、俺の一人負けかよっ!!」



俺らグーで律だけチョキを出している風景。別に俺ら組んだ訳とかじゃなくてね。


「「「律じゃんけんよえー」」」


4人でじゃんけんしてるのに「あいこでしょっ」が一回もないとかウケる。


「早く戻ってこいよー」


律の後ろ姿を見送ると、あっと言う間に人ゴミに溶けこんでしまった。


(それにしても人多すぎ……)


あまりの多さに、一瞬目の前が霞んで見える。あぁ、律が迷子にならないか心配になってきた。


そんなことを思っていると、諒が少し先を指差しながら目を細めて何かを見つめている。


「あそこにいんのさ、大樹と啓太郎だよな?」

「あ、本当だ」


どうやら諒と田中の友達らしい。
中学の時のダチ、だろうか。


「ちょ、会いに行かねっ!!なぁ、依乎もこいよ」

「……いや、俺はここで待ってる。今日会う初対面はお前らだけで充分」

「あ……そうだよな。てか俺ら初対面だったんだっけ……。んな感じ全然しねぇけどなっ。すっかり忘れてたわw」


確かに、と言って笑いかける。諒と田中は話しやすし、前から友達だったような錯覚を起こしそうになる。


「少し抜けんな、わりィー」


諒と田中が抜けて、とうとう一人になってしまった。
これなら最初から、律に着いていった方が、話し相手がいて良かったかもしれない。


2人が戻ってくるまでの間、何してよー。持たされたサッカーボール片手に、また当然のようにぼんやりしていた俺は、注意力散漫だったのかもしれない。




「ちょぉ〜と、ヒックッッ。そこのお兄さぁ〜んっっ。一緒にお酒飲もうよぉ〜。ヒックッッ」


(やばい、何か変なのに捕まった……)


酔っ払ったじーさんに手首を掴まれる。

……てか、このムダに強い握力はどこからきてんだよッッ!!このまま掴まれてたらきっと腕に痕残るぜ?


「あの、すいません。俺、まだ未成年なんで酒飲めません。それに友達待たせてるんで……腕、離して欲しいんすけど」


「もう何も言わなくていい、離しやがれじじい……」という念を込めて、ニコリと人の良い笑みも付けたしてみせる。

俺のこの気持ちはじーさんに届いただろうか。
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