慟哭の彼方
視線を移すと凛々しい顔をした彼女と目が合う。
何も口出しするなとその瞳が物語っていた。
「彼女はここにある願い事を持ってやって来た。その願い事が何だかわかるか」
彼が小さく首を振る。
わからなくて当然だ。
そして、理解できなくても当然だ。
「おい、チェル…」
依頼人の願い事を話すということは、秘密を晒すということだ。
秘密主義のこの店にそんな行動が許されていいのか。
けれど彼女は止まらない。
このまま彼を彷徨わせることがいいことだとは思えない。
だったらオレは彼女の秘密を話してでも、彼を縛るものを解いてあげたかった。