†DragonーaーTheorem†
第1章

竜の少年


「お?」

風を切りながら少年は呟いた。足元に広がる広い草原の中心には目立つ、赤いゾウのような生き物がいたからである。その場で宙を漂い始めた少年は、着けていたゴーグルを額にあてた。

「アカゲゾウだな…
…あいつの肉うまいんだよなぁ〜」

帰ったら塩を軽くふってサッと焼いて…、あ、煮てナッツと和えるってのもいいなぁ…、いやいや、揚げ物にするってのも…
などと想像を膨らませつつ、涎を垂らす少年の表情はなんとも幸せそうだ。すると少年の下から声があがった。

『おいゼルア。涎を垂らすな、汚いだろう』

「ん?あ、悪い悪い」

慌てて口許をぬぐいながら、ゼルアと呼ばれた少年は自分の下にいる、銀色の竜の首を軽く叩いた。竜はゼルアを一瞥するとアカゲゾウに視線を戻す。

『あのサイズなら、今日の村の食料は大丈夫だろう』

「だな。…あ、湯に通した後に冷やして冷しゃぶってのも…」

『黙れこの食い意地のはったバカが、今は狩ることだけを考えろバカ』

「…バカなのは認めるが二回も言うなよ、傷つく」

『ちなみに、生で食うとうまいぞ』

「お前も考えてんじゃねぇか!」

『ほら、獲物が逃げるぞ。構えろゼルア』

「話を逸らすなよシゥ!」

アカゲゾウ目掛けて急降下する竜、もとい、シゥ。急速に獲物との距離が縮まる中、ゼルアは背に担いだ緋色のやりに手をかけた。

「きょ・う・の・ゆ・う・め・しぃ〜〜〜!!」

ゼルアは勢いよくアカゲゾウの上に飛び乗った。



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