ナツの夏
「そりゃあね、行きたかったよ。都会にも憧れてたし、何より瑠璃姉の近くに居たかったからね」
応えはわかっていたことだけど、どうしても胸がチクリと痛む。
痛むとわかっていても、なぜか知りたい。
「でも俺には、瑠璃姉の隣で彼女を支えるなんて力はないの。そんな大役、俺には勤まらない」
「そんな…初めから諦めちゃうなんて、もったいないです」
「アハハ確かに男らしくないよなぁ…でも、おれは決めたんだ」
居間を通り抜けたそよ風に、皐月が目を細めた。