everlasting love~幾星霜の果て
ヴェラは上半身にひどい火傷を負った。
両手は火傷の痕が残るものの、ピアノを弾くことに支障はないという。
しかし、顔にひどい火傷の痕が残ることが分かったヴェラは塞ぎこんでしまった。
「……ヴェラ」
あの日以降、僕は毎日のようにヴェラを見舞った。
退院して家に戻ったヴェラは、ピアノに近づこうともしない。
ヴェラにとって、自分のすべてだったピアノ。
僕は少しでも元気を取り戻してほしいと、ある日、ヴェラをピアノの前に誘った。
そして。
彼女の大好きだった、“ハンマークラヴィーア”第4楽章の楽譜を開く。
「……他の曲にして」
沈んだ声で言いながら、ヴェラは火傷の痕が鮮明に残る手で、楽譜を閉じた。