everlasting love~幾星霜の果て


「ヴェラ……」


「……死ぬまで忘れないわ。この曲を聴くたびに、わたしはパリ音楽院のことや、この火傷のことを思い出すのよ。……大嫌いよ、こんな曲」




生気のない表情で淡々と言うヴェラに、胸がズキンと痛んだ。

半狂乱になって怒鳴りつけてくれたほうがまだ良かったのに。



ヴェラの両手はピアノが弾けるまでに回復したというのに、自らその道を絶ってしまった。



ピアノをやめたヴェラにとって、ピアノ教師である僕はもう必要ない。

マティルダはヴェラへの懺悔を口にしながらも、パリ音楽院へと入学した。



その後、僕とヴェラは二度と会うことはなかった――……






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