喧嘩屋土門
「あー…」

気だるげな声を上げ、男は布団に潜り込む。

もう一度、切なげに鳴く腹の虫。

「いけねぇ…いけねぇな腹の奴…」

小さく呟くが、腹は男の事情など知る由もない。

ただ己の仕事を果たすだけだ。

何か食い物を腹に詰めろと。

「ええいっ、わかった」

布団を跳ね除け、男は立ち上がる。

着替えもしない、顔も洗わない。

着る物も着たまま、ボサボサの頭に櫛さえ通さぬまま。

男は雪駄を突っ掛け、ピシャンと長屋の引き戸を閉めた。

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