白い翼と…甘い香り

「来月からアメリカに
行かなくちゃならない。

引っ越しの準備をしててくれ」



どうして今日はこんなに
帰りが早いんだろうと

そう思っていたら
主人が、突然

前触れもなく
そんな事を言い出した。



「何?、どういう事?」

意味が
分からなかった。

引っ越すって
誰が…??

今、どこへ行くって
言ったの?


アメリカ……?

心臓がギュッと掴まれ
早鐘のように鳴り始めた。



「君も知ってるだろうけど
M工業が新しい工場を
立ち上げるんだ。
全部の設計を任された」

M工業は、主人の口から
何度も聞いた名前だから
良く知ってる。

最初は偶然に、M工業の社長が

主人の作った
知人の家を気に入り
自宅の設計を任せてくれた。

それから何年も
付き合いがあって

主人が段々と
仕事の手を広げるのに
力を貸してくれていた。

今は仕事の付き合いというより
友人として
付き合っている感じだった。



「こっちで受ける仕事は
どうするの?」

「小さな物なら
若い奴に任せておける。
私もたまに帰ってくるから
大丈夫だ」


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