白い翼と…甘い香り

主人は、設計士をしている。
今は建築デザイナーと呼ぶ方が
良いのかも知れない。

仕事の内容を
詳しく聞いたりしないけど

若い頃は普通の一般家庭を
受注してデザインしていた。

それが段々と大きな建物を
専門に扱うようになり

今では
病院だとか図書館だとか

設計から完成までを
見守っていたら何年も
かかってしまうような
大きな仕事ばかりだった。


M工業は業績も良いみたいだし
大きな工場を新しく造るなら
主人が現地へ行くのは
当然の事に思えた。


「私も、行くの…?」


「当然だろう?」


君はいったい
何を言ってるんだ?
という顔で

当たり前の事を聞くなと
そんな雰囲気で答えた。



イヤだ
行きたくない…

ココから
離れたくない。


だけど
行きたくない理由を
告げる事なんて

私に
出来るはずも無かった。


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